南アルプス(ほぼ)全山縦走合宿1班 前編
- 杉山
- 2019年10月15日
- 読了時間: 10分
更新日:2023年10月3日
恥を忍んで、昨年の縦走合宿の記録を今更ながら書き連ねる。
さて、例年は登攀合宿を行いそのまま縦走合宿に移行、という形態だったので縦走できる山域が岩場の近くと限られていた(みんな大好き北アルプスである)が、今年は登攀合宿と縦走合宿を完全に分けて、南アルプスに手を出すことにした。
北と南から入山してちょうど中間にあたる三伏峠で合流して下山しようという声もあったが、どうせなら全山にしようぜという僕のわがまm…いや、冒険心あふれる一言によって二班に分かれてそれぞれが全山縦走するという計画になった。
これはそのうち北(夜叉神峠)から入山し、ほぼ2週間かけてなんとか畑薙ダムの方まで行動した1班の記録である。
メンバー:3回生 杉山、2回生 浜田(途中離脱)、新入生 岡、大谷、藤井、戸梶
1日目 8/21 曇り 京都駅~夜叉神ヒュッテ
さて、いつもなら夜に京都駅に集合、夜行バスでゆったりぐっすりと目的地に向かう我々だが、今回は夜行バスが取れなかったので朝に集合。
みんな眠そうな顔をしていたが忘れ物はなく、高速バスに乗って韮崎駅まで行く。

↑京都駅のバス停。ディズニーランド行きのバスを無表情で眺めるのも定番。
韮崎駅からはタクシーで夜叉神ヒュッテへ。僕はこの道は冬にしか通ったことがなく、雪の積もっていない山道が少し新鮮。
冬は開いていない夜叉神ヒュッテが開いているのを見て、「夏なんだなぁ」とちょっとした感慨にふける。
夜叉神ヒュッテは駐車場の後ろのちょっとした平地がテント場になっており、テント設営。
すると受付を終えた浜田が何やら嬉しそうに何かを両手いっぱいに持って帰ってきた。
それはヒュッテのご主人がくださった人数分のすももで、入山前日からうれしいことが起こってみんなの機嫌が良くなる。
明日から天気が崩れる、という予報もあり、ちょっと不安になりながらも就寝。

↑頂いたすももにかぶりつく。最初からうれしいことが起こるといい合宿になりそうな気がする。
2日目 8/22 曇り時々晴れ 夜叉神ヒュッテ~薬師岳~観音岳~鳳凰小屋
いざ入山。地図上ではきつそうな登りで夜叉神峠まで登るが、実際に歩いてみると驚くほどに整備されていて歩きやすい。
また、ハーネスやクライミングのギア類を持たない合宿は初めてで、荷物も20㎏ほどといつもに比べればはるかに軽量というのもあってすいすい登れた。
この歩きやすい道は夜叉神峠を超えて杖突峠のあたりまで続いた。

↑この平らな道である。
さらに歩き、南御室小屋へ。縦走に不慣れな1回生が疲弊しているようならここで泊まる予定だったが、時間にも皆の体力にも余裕があったので、鳳凰小屋へ行くことにした。やるじゃない。
小屋の女将さんが「水はタダで持って行っていいから、熱中症には気を付けるんだよ」と声をかけてくださった。お言葉に甘え水を補充し、先へ進む。
南御室小屋から薬師岳小屋への道は歩きにくい急登であった。
薬師岳小屋の手前のあたりで、ちょうど道のわきにスペースが開いていて、そこで休憩をとっていたが、休憩中にあることに気づいた。
この辺りは岩が出ている場所があり、ちょうど今目の前にある岩はいい感じに登れそうなのだ。
岩を見つければ登る道筋を探してしまうのは山岳部のサガか、僕と浜田のボルダリングもどきが始まった。1回生は「何やってんだこいつら…」という目を向けてくるが、彼らもこうなってしまうまでそう時間はかからないだろう。

↑岩を見つけたらホールドを探してしまう、山岳部あるある。
岩で遊んで満足し、薬師岳小屋でトイレ休憩をして薬師岳へ。
「鳳凰三山カウントアップ」を思いつき、最初の薬師岳は全員「1」のサインで写真を撮る。

↑鳳凰三山、最初の薬師岳。
続いて観音ヶ岳へ。ここでは「2」のサインでパシャリ。

↑観音ヶ岳。「ヶ」が入ったのは平成17年と、意外と最近らしい。
1回生には疲弊の様子が出ていたが、励ましながら鳳凰小屋までの地味に長く急な下りを進む。
青い屋根が見えたら鳳凰小屋の目印。
みんなお疲れの様子で、受付を終えテント場になだれ込む。ペグハンマーは貸してもらえたのがありがたい。
というのも、これまでの夏合宿は北アルプスのテント場にしか言ったことがなく、「その辺の手ごろな石でペグを打つ」のが当然と思っており、ペグハンマーの出番はなかった。それゆえに軽量化のため合宿に持ってきていなかった。
鳳凰小屋のテント場は非常によく整備された平らな砂地で、石が見当たらなくて困っていたのだった。
無事テントを張り終えると、晴れ間が見えた。小屋の方に富士見台まで行くと見事な富士山が見えると聞き、みんなを誘ったが浜田しか来てくれなかった。みんなお疲れさまやで。
天気図からの天気予想では明日は雨。沈殿かなぁと思いながら就寝。
3日目 8/23 雨 鳳凰小屋にて沈殿
朝から雨。知ってた。
早々に沈殿を決め、寝袋に潜る。
…しばらくすると背中に違和感が。ううむ、覚えがあるが思い出したくないこの感覚は…
そう、雨の流れの通り道(プチ集水域とでもいうか)の上にテントがあり、浸水してきたのだ。
よみがえる昨年の悪夢(この辺りは2018年夏季長期合宿~縦走2班編~をご覧ください)。
テントを無理やり移動させ、スイムタオルで排水を行う。テント内でも自分の場所は浸水の被害が少なかったことが分かり、少々ほっとしながらも皆を励ます。
天気図的にはグレーゾーンだが、明日は晴れてくれるといいなぁ…
4日目 8/24 晴れ 鳳凰小屋~地蔵岳~アサヨ峰~栗沢山~長衛小屋
長丁場ということで午前2時に起床、3時に行動開始。
陽も出ていないうちに賽の河原を登り地蔵ヶ岳まで行く。どこまで登っていいか分からなかったため、山頂付近で「3」のサインでパシャリ。

↑おかわり…おわかりいただけただろうか…
…変な光球も映っている気もする、が全力で気にしないことにする。うん。お化けなんてないさ。(でも顔認証されてたんだよね…)
おかげで、赤抜沢ノ頭までのお地蔵様がホラーに思えてきた。
少し歩いた高嶺のあたりで陽が出てきた。振り向くときれいな地蔵ヶ岳。思わずパシャリ。

↑朝日とオベリスク。ちょっとだけパタゴニアのロゴっぽい?
高嶺~広河原峠まではちょっとしたクライミング要素があり、もし冬場に重装備で来るなら難所になるかも、と思った。
見た目よりは緩やかな早川尾根を登ると、今は無人の早川尾根小屋に出る。明治大のワンゲルに出会う。微妙な天気のせいで2日間動けず、待ちに待った太陽で喜びながら濡れたものを乾かしていたようだ。
その気持ち、めっちゃわかります。小躍りするくらいにはうれしいやつ。
アサヨ峰までの地味に長くきつい登りを経て、アサヨ峰に到着。
北岳が真正面に。それ以外にも、仙丈ケ岳、甲斐駒ヶ岳、鳳凰三山と南アルプスの豪華キャストを堪能した。遠目には八ヶ岳も見え、頑張れば北アルプスの方も見えそうだ。

↑アサヨ峰。行くのは大変だがステキなビューポイント。
栗沢山への岩場を超え、長衛小屋まで下る。
この辺りで行動時間が12時間を超え、皆、疲労困憊の様子だったが、沢の音が聞こえた瞬間に元気に歩き出した。
無事長衛小屋についたが、休日だったのでテントがいっぱいだ。
何とかスペースを抑え、設営。
序盤からハードすぎたか、と反省した僕は皆の機嫌を取るためコーラを買い与える(大谷は炭酸が苦手だったのでソルティライチにした)。
翌日の甲斐駒ヶ岳をサクッと登ってしまうための妙案を皆に話し、準備し就寝。
5日目 8/25 曇りのち晴れ 長衛小屋~仙水峠~甲斐駒ヶ岳~北沢峠~長衛小屋
甲斐駒ヶ岳アタックに対して自称知将(次長課長みたいな韻だな)の僕が考えた妙案とは、ずばり「荷物を背負う人を少なくして、休憩のたびに背負うのを交代すれば隊の速度も上がる」というものだった。
アタックなのでそんなに荷物もないし、荷物を二つにまとめればそれぞれ10㎏もないだろう。
楽勝だな!!
…結論から言うと、これは失敗だった。隊の速度が上がると考えたが、荷物を背負った人は必然的に遅くなり、皆はそれに合わせるために待たねばならなかった。
考えてみれば、小学生の時にやった「荷物持ちじゃんけん」のようなものである。荷物を他人に持たせている間は楽だが、普通に歩くよりも倍くらいの時間がかかっていたような気がする。
知将、失脚。命名、バカ殿。

↑仙水峠には日の出を見に来た人が多かった。
まぁそんなこんなで甲斐駒ヶ岳山頂に立つ。黒戸尾根は機会があったら冬に登りたい。
広い山頂で遠目の山を確認しながら休憩する。目に映る荒川岳はもちろん、塩見岳もまだ遠い。頑張ろう。

↑甲斐駒ヶ岳。ヘルメット着用の安全志向で登りました。
駒津峰~北沢峠の道は人が少なく、渋滞することなく歩けた。仙水峠は眺めもいいからみんなそっちに行くのだろうか。
長衛小屋に戻ると、翌日のこれまたハードな行程に備えて早めに就寝した。
6日目 8/26 曇り時々晴れ 長衛小屋~仙丈ケ岳~伊那荒倉岳~両俣小屋
出発準備が予定より早くでき、幸先よく出発する。
バスの道を少し歩き、小さな橋を渡るといきなり登山道である。
最初は道が分かりにくかったが、尾根筋に合流すると途端にわかりやすくなった。
登りはところどころが平坦になっており、休憩をはさみつつ歩く。
ダケカンバに囲まれると、もうすぐ森林限界である。
森林限界を超えると一気に視界が開け、ハイマツの斜面を登り小仙丈ケ岳につく。
北岳や甲斐駒ヶ岳、遠くに目をやれば北アルプスも見えた。槍ヶ岳、大キレットは遠目にもわかりやすいね。
そこから狭い岩稜を歩けば仙丈ケ岳につく。遠目にはなだらかな山頂だが、実際は結構狭い。

↑人が多いと結構大変。
そこから仙塩尾根を歩く。見事なカール。二重稜線も面白い。
樹林帯に入ると、野呂川越まで地味なアップダウンが続く。歩きにくく、体よりも、精神的につらい道だ。
野呂川越からの下りは最初はびっくりするほど急だが、後の方は楽だ。
そして、小屋の手前で衝撃の事実が判明する。
「登山道荒廃につき左俣ルート使用不可」の看板。

↑狂った計画のリカバリーは上回生の腕の見せどころである…かな?
さて参った。左俣ルート(両俣小屋~北岳)を使って北岳に行き、そこから下って農鳥小屋に行く予定だったのだ。
翌日の行動を、「両俣小屋から仙塩尾根で熊ノ平小屋に行き、テントを設営後、必要なものだけ持ってきただけに行き戻ってくる」に変更し、就寝。
さて、どうなるか。
7日目 8/27 曇りのち雨 両俣小屋~熊ノ平小屋(テント設営)~間ノ岳~北岳~熊ノ平小屋
さて急なルート変更である。夕方頃から天気が崩れそうなので早めに移動したい。
ここで浜田が私用で離脱。野呂川越まで、藤井の荷物を持っていくという優しさを見せた後、別れた。
三峰岳の周辺は岩場で、クライミングが苦手な人がいたら補助を出した方がいいかもしれない。
三峰岳の山頂で休憩。冬に通った時と違うけど同じ(人によっては同じだけど違う、と感じるかもしれない)風景を前に、これから先の道を案ずる。
熊ノ平小屋につくと、パパッと受け付け、テント設営、出発準備を終え、いざ北岳へ。
甲斐駒ヶ岳の反省を生かして今回は全員が少ない荷物を持つようにした。すると、予定していた時間の6~7割の時間で行動できた。びっくり。
間ノ岳で写真を撮ってもらい(この合宿で僕が映っている数少ない写真である)、北岳山荘へ。

↑間ノ岳。標高日本3位の3のポーズ。
山荘で休憩をしっかりとり、山頂を目指す。山頂までの道は険しく、休憩できる場所はない。
雲が出て視界が悪く、何回か紛らわしい小ピークを山頂と勘違いしながら進み、なんとか山頂へ。
まるで僕たちの到着を待っていたかのように、少しの間、晴れ間がのぞいた。
そこへ小鳥が飛んできて、山頂を散歩してまたどこかへ飛んで行った。
それを見た大谷が一言、「あれって雷鳥ですか?」
この男、雷鳥に出会えるのを結構楽しみにしているが知識は持ち合わせていないらしい。
「そうかもなぁ…」と夢を壊さないようにし、山頂の写真を撮る。

↑北岳。みんなのポーズの意味は通じるだろうか。
行動時間が14時間を超え、皆疲れた様子で熊ノ平小屋に戻った。
翌日は雨の予報。
さて、全行程的にはここが中間。この先に待ち受けているのは天国か、地獄か。
どっちもだった…
後半へ続く!!
おまけ

光の加減でぼやけてUMA発見の写真みたいになった浜田。
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